不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。









“大切なモノ”


そう言った律くんは、それからしばらくの間黙ったまま言葉を発さなかったから、ゆっくりと顔だけを彼の方に向けて様子を伺った。




瞬間、パッチリと目と目が重なる。


私は慌てて元に戻って再び手を動かす素振りを見せた。そんな私を見た律くんは、微かに笑ったような気がした。







「何度も話し合ったんだけどね?瑠衣と同じ推薦校には進学できないって」


「……」


「ここに入学してからも、どうにか瑠衣との仲を修繕しようと試みたんだけど、バスケが何より大切な瑠衣と、バスケ以外にも大切なモノを作った俺との間には中々埋まらない溝ができたみたい」


「そんな……っ」






中学生のころの律くんの活躍は、バスケラボと真実ちゃんの情報提供から少しだけ得ていた。


2年生でエースに抜擢され、1年間無敗を誇ったこと。

3冠達成を成し遂げたこと。

ジュニアユースにも選抜されたこと。




だけどこんなにも輝かしい功績の裏側で、そんなことがあったとは露程も知らなかった。