「――伊都ちゃん。じゃあそのままでいいから、聞いてくれる?」 「……なんですか?」 そう意気込んで強く歯を食いしばった途端、律くんの落ち着いた声はうしろから優しく私の耳に響く。 グッと立ち込める何かを堪えながら、それでも律くんの言うとおり手を止めることをせず大袈裟なくらい元気な声で応えた。 「瑠衣と俺ね――……」 それは私の背中に向けて言葉を放った彼の、中学生のころのはなし。 瑠衣くんと律くんが、同じ中学でチームメイトとして活躍していた、私の知らない彼のはなしだった。