不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。










初対面の人になんて醜態を晒してしまったのだろう、と恥ずかしくなりながら立ち上がって足についた芝生の草をパパッと払う。


今日の対戦相手である聖央高校の人が、どうして1人でここにいるのだろう。





「で、第2体育館どこ?つーかなんでこの学校は3つも体育館があるんだよ」


「えっと、第2体育館はここを右に曲がったところの突き当りにあります」


「おー、やっぱあっちか。迷子になるところだったわ、ありがとなー」


「いえ、私の方こそ」


「……ところでさ。質問ついでに教えてもらいたいんだけどさ、一宮 律って知ってる?」


「り、律くん……ですか?」

「お、ビンゴ。知ってる口だな、その反応。もしかしてアンタ章栄バスケ部のマネージャー?」


「マ、マネージャーの見習いです!」


「あ、マジか。じゃあえっと、なんつったかな。南野伊都、だっけ?そいつのこともアンタ知ってたりする?」


「!?」





ど、どうしてこの人は、有名な律くんの名前だけではなく私のことまで知っているんだろう。


知っているも何も、私が南野ですとはとても言い出しづらい。



一体私とどんな繋がりがあるのか、記憶を遡ってみてもピンとくることは愚か、今まで月刊バスケラボで養ってきた高校バスケ界の知識を駆使してみても彼の名前すら分からない。


だけどこの長身にこの威圧感、ただ者じゃないことは確かだ。