悠太くんはふっと笑いながら、「とりあえず電気付けるぞ」と言って慣れた手つきでリモコンを操作した。
急に明るくなった部屋は眩しくて、私は顔を背けながら目を瞑る。
大丈夫、大丈夫と心の中で何度もうそう唱えながら。
「伊都?」
悠太くんの声は、小さな頃からいつも安心できた。
それはきっと、彼とこんなふうに10年以上も毎日のように顔を合わせてきたから。
小学校2年生のとき、私がここへ引っ越してきてから今の今までずっと、《家がとなり同士の幼なじみ》として培ってきた絆があるからだ。
私にとって悠太くんのような大切な存在が、今の律くんにあるのだとしたら……と、考えたところで分かってしまった。
何もかも、全部理解してしまった。
「……悠太くん。私、もう大丈夫」
「……」
「もう、大丈夫だよ」
ギュッと力を入れて握ったこぶしに、気付いていなかった。
言い出せずに飲み込んだ言葉が、苦いことを知らなかった。
今ならまだ間に合うと、そう思っていたから――。



