“そのせいで律がどれだけ悲しんだか”
――お父さんがいなくなってからこの家に引っ越すまでの期間はきっと、今までの人生の中で一番と言っても過言ではないくらい散々だった。
だから自分のことで精一杯だった私は、結果律くんを傷付けたんだ。
当時のことをどんなに思い出そうとしてみても、律くんとの記憶は一切蘇ってはこない。
最後の日に何を言ったのか、何を話したのか、そもそもお別れを言えたのかどうかさえ曖昧なまま、それでも彼女が言っていたことが丸ごとそのまま答えだ。
“それから今は――……あたしの彼氏なの”
「……っ」
おめでとうございますって、言えなかった。
そうなんですねって、相槌さえ打つことができなかった。
ただギュッと胸が締め付けられるこの痛みに耐えて、耐えて、耐えて――。



