不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。








昔、お父さんが言っていた言葉を1つ思い出した。



それはまだ幼稚園のころ、『背が高いから』という理由で抜擢された学芸発表会の主役を務めることになった私は、その当時は今よりももっと恥ずかしがり屋を極めていて、毎朝幼稚園に行くことさえ苦痛になるほど嫌で嫌で仕方がなかった。


けれどあるときお父さんは、そんな私を見て『いい、伊都?ここで1番恥ずかしいことは、みんなが一生懸命やっているときに1人練習をサボったり、頑張っている子のことを馬鹿にしたりすることなんだよ』と言った。




あのときはまだその言葉の意味が理解できなかったのだけれど、今ならそれが痛いくらいに分かる。


夕夏さんはきっと、このバスケ部のことを本気で想っていて、本気で考えて、本気で優勝を望んでいる。

だから私も、せめてその熱量に応えたい。





「このタオル、洗濯してきますね!」

大きなカゴいっぱいに入った使用済みのタオルを持ち上げて、裏庭にある洗濯機までひとっ走りして来ようと立ち上がった。







「なんなの、アンタ……っ。きれいごとばっかり言っちゃって」


「え?」


「でも仕方ない。南野さんには言っておくね。あたしと……それから律のこと」


「律くん、ですか?」


「あたし達ね、幼馴染なの。同じバスケのチームに入っていたし、小中と学校も同じ。南野さんが律に何も言わないで去って行ったことももちろん知っているし、そのせいで律がどれだけ悲しんだかってことも一番近くで見てきたの」


「お、幼なじみ?……悲しむ?」


「でもその傷を癒したのはあたしで、ずっと傍にいたのもあたし」


「……」











「それから今は――……あたしの彼氏なの。」