不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。






それは、放課後。


今日は体育委員恒例の、月に一度行われる体育館の点検日。


惜しくもまたジャンケンで負けてしまった私は、プロ並みの素早さで点検をしていたとき。

ドンッと鈍い音が館内の隅々にまで響き渡った。





「律―!おまっ、お前何やってんだ大丈夫か!?」


「いったー。これは痛い。ねぇタケちゃん俺の鼻その辺に転がってない?」


「バカ!気色悪いこと言うなよ!ちゃんと付いてる!」


「そう?なら良かった」


「律、お前。気を付けないとまた動画出されんぞー」


「あー、あれ俺も見たよ。酷いよね、ちょっと転んだだけじゃんね」


「お前のその容姿でズッコケたってところが面白いんだわ」






律くんが、壁に思いきり激突していた瞬間を見てしまったのだ。

遠くからだけれど、確実に見てしまった。





「おいおいおい律、鼻血出てるぞ!誰かティッシュ!」


「……ふふっ」


「何笑ってんだ!一旦横になってろよ!」


「んー?そう言えばね、俺の大事な子もよくこんな感じだったなあって思い出してただけ」


「だ、大事な子!?え、好きなヤツか?」


「まだ秘密」






律くんがチームメイトと会話している声なんて、私にはもう届かない。


大変だ。

律くんに、不幸体質が移ってしまった……かもしれない。