「……なに? また婚約を……と言われたら私はショック死するかもしれない」

 そう言って肩を落とし首を振る殿下、いえ。ジェフェリー様の青褪めた顔に小さい声。


「そうではなくて、毎日プレゼントを贈って下さるのは結構です。だって、大変でしょう? それにお金もかかりますしお気持ちだけいただきます」

 ジェフェリー様が使える年間の予算は決まっています。私がデビューして社交を始めると婚約者である私の分の予算も決まるようです。


「十年も我慢してきたんだ……セリーナに似合いのものを見たら贈りたかったのだが、重くないだろうか。などと思って贈る事が出来なかったんだ。とても反省している。品物を贈って今までの十年間の空白が埋まるとは思わないけれど、セリーナを思ってプレゼントしたかったんだ」


 そんなことを言われると、要らないとは言えませんね……


「ありがとうございます。私も殿、いえ、ジェフェリー様に何かお返し出来れば良いのですけれど、何がよろしいですか?」


 王族であるジェフェリー様は望めばなんでも手に入るもの。何かお渡しできるものがあれば良いのですけど。


「セリーナから? 私はセリーナが一緒にいてくれるだけでそれだけで良いんだ、それ以上は望まないしそれこそが贅沢だと思っている」


 私の顔を見てぎこちなく笑うジェフリー様がなんとも言えず素敵に見えましたわ。

 ずっと無表情がトレードマークでしたのに。

 思わずふふっと笑うとまた顔を逸らされましたわ。

 でも嫌な感じはしなくて、微笑ましいというか、嬉しくなりました。