「よし!」

 深呼吸してセリーナの教室に入る。

 ……あれ? いない。どこに行ったのだろうか。もうすぐ休憩時間は終わりそうだ。


 ちょんちょんと肩を触れられた! もしかして……セリーナか?


「誤解なんだ! どうか話を聞いてくれ! セ……」

「まぁ! 私でよければ! 今日の放課後にサロンへお邪魔しますね!」

 にこりと笑う世話役の娘……ジュリなんとかと言ったか?

「いや、それが誤解だ! 私は、」


 ちょうどタイミング悪くセリーナが教室に戻ってきたようだった。

「セ、」

「殿下、それでは放課後に」


 ジュリなんとかはセリーナを見て笑っていたような気がした。セリーナは私に会釈をして席につき次の授業の準備を始めた。
 鐘が鳴る……次の授業が始まる合図だ。

 くっ……! ここまでか! 授業に遅刻するわけには行かない。 

 学生の本分を忘れてはいけない! ましてや私は王子……皆の手本とならなければならない! 急いで教室を後にした。