「セリーナがきた!!」

 とある一室で新入生を今か! 今か! と待ちわびる男がいた。

 名前はジェフェリー・ロジェ・エルノと言う。

「やっぱり可愛いよなぁ……これからセリーナを毎日見られると思ったら、嬉しくて昨日は中々寝付けなくて寝不足になったよ」


 にこにこと頬を緩めるこの男は、セリーナの婚約者だった。


「なんですか? やっとお気持ちを伝えることにしたんですか?」

 ジェフェリーの側近の一人が言った。


「言ってもいいと思うか? 好きすぎてセリーナに近寄れないんだ! こんなことを言って嫌われるのが怖い」


 セリーナを遠くから見つめながらジェフェリーは言った。


「いや……今のままだと殿下に嫌われていると思っていても仕方がないかと……?」


「私がセリーナを嫌いになることなんてあり得ない話だ! どんなセリーナでも大好きだ」 


「私どもは、貴方がセリーナ嬢のことを必要以上に愛しておられることは存じていますが、セリーナ嬢に言った事がないのでしょう? しかも、直接お会いになったのは一年前に貴方がこの学園に入った時でしょう?」


「誕生日にはプレゼントを送ったし、私たちが出会った記念日にもプレゼントを送ったし、季節の変わり目にも手紙を書いている。返事も返ってきたし順調だろうが! それに、セリーナが十六歳になったら成人だ! やっとエスコートして堂々とパーティーにも行けるんだぞ。ドレスも贈れるし、」

「その前にセリーナ嬢と交流することをお勧めしますがね」