今となっては十年間の無表情がなつかしいと言うか幻だったのかとさえ思います。
 ジェフェリー様が学園に入学するまでは王子妃教育で、会話はないけれど毎週王宮でお会いしてましたから、会えなかった一年は空白ですし、その分も含めて関係の見直し期間だと思えばよろしいですわよね。



「ドレスをプレゼントしていただきありがとうございます。似合っていますか?」


「もちろん似合っているよ! 女神のように天使のように妖精のように! すごく可愛い! 私の婚約者が可愛すぎて尊いよ」

 とても嬉しそうにジェフェリー様は褒めてくれた。興奮気味に? 褒めてくれた。


「……褒めすぎですわ」

 褒められすぎて頬が赤くなっていると思います。ジェフェリー様ったら。もう。

「気持ちが溢れるんだよ。私が贈ったドレスをセリーナが着てくれるなんて! こんなに嬉しい事はないよ」



 とまぁこんな感じでデビューを迎えたセリーナ。

 今年デビューを迎えた誰よりも注目を浴びた。新聞社はセリーナのデビューの記事を載せジェフェリーとの仲の良さをアピールした。

 アピールなどしなくても既に周知の事実だったのだけれど。二人の姿絵を模したものは街で人気になった。ゴシップ紙を信じる者などもはや誰もいない。将来の国王と王妃が仲睦まじいのは国民にとってもいい事だから。