「はい。私は長年フロス商会で働いていました」

「ほう、王都一と呼ばれるフロス商会ですか。今は……大変な時期と言ったところですね」

「はい、私は経理を担当していました。最近は全盛期のような売り上げはなく、ご存知の通り売り上げは落ちていく一方でした」

「何か原因があったのでしょう?」

「はい。例のゴシップ誌の件はご存知でしょうか?」

「ふむ。最近の話ですと王太子殿下とフロス商会の娘の偽ロマンス騒動ですね」



「はい。事実無根であるにも関わらずにまるでそうなるようにと言う意味合いを込めて噂を流せと、人を雇い噂を広めていました」

「なるほど」


「もちろん事実とは異なりますし、王太子殿下と商会の娘さんは実際は恋愛関係にはありませんが、娘さんはそのように社長に話をされていました。自分は王太子殿下にとって特別なのだと」

「ふむふむ」

「王太子殿下が娘の為に婚約破棄をするのなら慰謝料まで支払うなどと社長は言っていました」


「盲目ですなぁ。娘可愛さのあまり周りに耳を傾けなかったパターンですな」


「学園に入学された社長の娘さんは自分も偉くなったかのように振る舞っていました」


「いやいや、王立学園に入学できるなんて優秀なんですな」


「実際はそこまで……と言う感じです。平民が授業料免除なのは皆さん知っていると思いますが、それは優秀で将来は王宮で働く候補としてです。国の為に、そして私達平民の希望として学園で勉強する機会が与えられます」


「それは有名な話ですね。実際私も何人かの出世している方に取材させてもらった事がありますが、皆さんとてもやり甲斐があると言っていました」


「学園では貴族の方は入学時に多額の寄付金を出しておられるようですから成績が振るわなくても問題さえ起こさなければ卒業出来るようです。一方で平民は問題を起こしたり、成績が振るわない場合は退学処分となります。これはよく知られた話です」


「ただで飯は食わせられませんしな。学園はボランティアではありません。世の常です。切磋琢磨して私達の希望となるのですから」


「社長の娘さんは成績が振るわなかった。よって退学させられた。もちろん例の問題も起こした。学園に入れたのは寄付金を出したからでそれは会社の金でした。娘さんが問題を起こしてフロス商会はある貴族様の家に食材を卸さない事にしました。しかし別の取引先と契約をするようになられて、他の貴族様たちもこぞって取引先を変えました。フロス商会は今や経営危機に陥っています。その事を言いますと社長に脅されました。なので私は会社を自ら辞めました。商売の手を広げすぎて色んなところに綻びが出てきてました」


「なるほど、最近またゴシップ記事が出ていましたな……これに対抗して記事にさせていただいてもよろしいですか?」


「はい」


「それでは詳しく──」


 フロス商会は貴族の家に食材を卸してやっている。うちが卸さなければひもじい思いをするのだからと言って、金額を上乗せし始め調子に乗っていた。その分儲けた金を娘の学園の費用に充てていた。