そんなことも知らず週末になり屋敷に帰ってきたセリーナ。

「あら? 美味しそうですわね」

 食卓には艶のある立派なサーモンやパンにスープ、新鮮なサラダが並んでいる。

「今まで来ていた業者を変えたのよ。新しい業者の持ってくるお魚が新鮮でとても美味しいのよ。パンはセリーナのお友達のサムさんの家のパンよ。朝焼いた物をついでに業者に頼んで持ってきてもらう事にしたの。シェフも気に入ったらしいわ」


「サムさんの家のパンですか。それは良いですね」

 グラスに注がれたミルクを一口飲むと、これもまた違う味わいだった。

「ミルクも甘くてコクがあって濃厚で美味しいですね、こちらも前のものとは違いますよね?」

 明らかに味が違いとても甘みがある、口に入れた瞬間にセリーナは分かった。


「ミルクはセリーナのお友達のダニエルさんの家のミルクよ」


「まぁ! ダニエルさんの?」


「チーズも作っているみたいで、シェフが足を運んで決めたらしいの。ダニエルさんの家はとてもこだわりを持って作っているようね。セリーナから話を聞いてシェフに伝えておいたの。食材はシェフに任せていますからね」


「ふふふ。それは素敵です、なにより美味しいですわ」


「以前はフロス商会から買っていたが、今は変えてよかったと思うよ。商売に手を広げすぎて食材についてはおざなりになっている感が見られたから、いい機会だよ」


 お父様もお母様も満足気な顔をしていましたわ。


「そう言えばセリーナは今日王宮だろう? 準備はいいのかい? ずいぶんのんびりしていないか?」


「えぇ。王妃様のお茶会にジェフェリー様と行きますの。準備は整っていますし朝食後に着替えて行って来ます」


「ほぅ。それは珍しいね、殿下に誘われたのか?」


「はい」


「婚約解消の話はなかった事になりそうだね。殿下の気持ちを聞いたのかい?」


 ニヤニヤする両親を見て恥ずかしくなりました。両親はジェフェリー様の気持ちを知っていたのですね。


「……はい」


「殿下はセリーナを裏切る事はないから信用していい。あの方は嘘をつかない」


「……はい」


 やはり誠実な方なんだわ。私がとんだ勘違いをしていただけなのかもしれません。