彼の宣言通り、結局この日は自宅に帰ることを許してもらえなかった。

美味しい食事に甘くてとろけるデザート。

豪華なお風呂のあとは念入りに髪を乾かしてくれて。

ベッドルームでは優しく香るアロマキャンドルが焚かれていて。

「ボディマッサージしようか?」なんて軽口はスルーさせてもらったけれども。

あまりにもしゅんとしてるのでやっぱり犬のメープルを思い出してしまって、仕方なく手の指だけマッサージしてもらったんだけど、すごく気持ち良かった。

まるでどこかの国のお姫様になったような気分にさせてくれて……。

何も文句はないけれど、私が彼のベッドを独占してしまうと彼はソファで眠ることになる。

それがどうしても申し訳なくて……。


「どうせ明日は『会社に行く』って言うんでしょ? だったらせめて今日はひとりでゆっくりベッドで眠って?」

「……」


私の思考は完全に読まれてた。


――見た目はホストみたいで話し方や雰囲気もふんわりしてるくせに、結構強引。

私の意見を聞いているようで、実際は彼の思うように動かされてる。

歳は私の方が上なのに完全に彼の方が一枚も二枚も上手。

結局、何もかも、完敗だった――。