その5


その休み時間、倉田マミは2年B組に出向いた。

「ああ、マミ…、お待たせ。なに?」

2Bの山本ミユキが廊下で待っていたマミにそう声をかけた。
それは、ぶっきらぼうに。
なぜなら、彼女と親しい三浦美咲に頼まれての件だと察していたからだった。

「あのさ…、昨日ミユキ、美咲に20人以上の連名でいやがらせメール送ったでしょ?その件よ」

「はー?何難くせつけてんのよ。あれは、自分の命を守る為の集団声明行動よ。親からもらった大切な命、粗末にしちゃマズイでしょーが。ちがう?」

ミユキはややニヤケ顔で、嫌味を込めてマミにそう返した。

「あんたさ、自分ら22人のなかで、もし手紙を送られた人間が一人でもいたら他の21人が断固たる措置を取るから、それなり覚悟はしとけってさ…、それ、どう考えても脅迫だって」

「マミ!アンタは仲がいいから、そりゃ手紙もらうことないから安心だからそんなきれいごと言ってられるんだって!で…、私らにどうしろってのよ?」

「まず、美咲は今、手紙を送らなければない立場じゃない。でも、仮にそういう状況になったら、わざと間違った住所で誰かに送って、友達とかは巻き添えにしないって決心してる訳!」

「…」

ここで山本ミユキは一気に顔つきが変わった…。


***


「アンタさ、冷静に考えてみなよ。私からしてもまず間違いないなく、美咲は来年、みんなと一緒にこの高校を元気に卒業するよ。そしたらさ、20人もの人間を取り込んであんな集団圧力かけるの先導した人間のこと、周りはどう見ると思うのよ?」

「…」

ミユキは顔つきだけでなく、顔色も激変させた。
言うまでもなく、真っ青に…。

「…アンタに誘われた連中はまず、アンタと縁切るよ。当然、親とかにもどっかで漏れて、まあ、下手したら全校中で、デマの先導者だって後ろ指さされるわ。何しろ、メールは残るからねえ。”そういうこと”でいいんなら、別に私はいいわ。他の21人に”直接”当たるよ」

「マミ…、それで、彼女らに何を…」

「今私が言った、美咲の善意を伝えて来るよ。そしたら、早まった行動に出て浅はかだった、許してねって…、みんな美咲に謝るって。決まってんじゃん。そしたら、昨日の声明はミユキ一人が継続ってことだから、美咲にもそう伝えとくわ」

「ちょ、ちょっと待ってよ、マミ…」

もう、ミユキは額に汗をにじませ、思わずマミの腕を両手で掴んでいた。
すがりつくように…。