その6


開封された鬼島の”挑発文”の原本は、この場の4人が一読後、鷹山が人数分をコピーし、それぞれ、そのコピーに再度目を通していた。


和田:これは…、奈緒子さん、どうだい?

奈緒子:いえ…、何と言っていいのか、どう解釈していいのか…。私では、すぐにはかみ砕けません。

鷹山:うーん、かなりトリッキーな表現だが、要はメッセージを施した文体ですね。まあ、”挑発文”ではあるといっていいんじゃないですか?

和田:国上さんの言われた、鬼島から読み手の我々に向けたヒントってことはもうありありですね。まあ、随所にエールを送ってるようなニュアンスも強いかな‥。おちょくってる文言も含めて。

奈緒子:でも、呪いとかそういう表現は一切ありませんね。プロジェクトとかって、そういう比喩にしてるのはどんな意図からなんでしょうか?

国上:やはり、残したお母さんへの配慮になるでしょう。この文面が、彼の望まない然るべき人間の目に触れた際を考えて…。


***


和田:うん。これなら、仮に警察が見ても何が何だかわからんですね(苦笑)。しかし、我々には概ね”訳せる”。

鷹山:はは、その通りですよ、和田さん。例えば、この前段部の”全部を塗り替えようとは思っていない”なら、僕の訳だとこうなります。”呪いの拡散で日本人全滅までは望んでいない”と…。

奈緒子:なるほど…。それと、”特技”は”呪いの念じ”みたいに訳せますね、私たちなら。あとは、彼の読み手へのメッセージですね。頑張って奮闘をというのは、直接的に受け取っていいと思うんですが…。

和田:でも、結構ダイレクトなメッセージが多いな、読み返すと。概ね、我々にはスーッと入ってくる気がしますよ。

国上:それは和田さん…、あなたと奈緒子さんが今日、鬼島則人の母親から彼の核心に触れる証言を受け取ってくれたおかげですよ。母への思いや、鬼島が願っていた、狂った自分のやりたいこととは、どういうことだったのか…。そこで、やはり呪いを断つ行動に出てる我々へ奮闘を願っての、彼からのヒントはありますよ。

ここで他の3人は、まなじりを決した面持ちで、国上からの次の言葉を待った…。