呪いマニアの正体⑨



「…それで、その遺書には私に宛てて、いろいろなことが添えられてましてねえ…。そのことと、則人から生前に聞いた様々なことをつなぎ合わせると…、まあ、主人の事故死も、それ以前のいろんな他人様の不幸やアクシデントも、あの子が念じたことじゃないかと思えまして」

「お母さん、その遺書の中に書かれていたことで、今言われた思いに至る決定的な、その遺書に書かれていた、則人さんの文脈はどんなところだったんでしょうか?」

ここでは、さしもの和田もその遺書を見せてくれとは言えなかった。
なので、彼の抱く確信を得るポイントを突いた尋ね方をしたのだが…。


***


「そうですね。”狂った自分を止められないので、長い間かけて磨いた特技を使っても罪にならない、あの世で存分に放ちます”って文言でした。…あの子、私が思ってた以上に早くから、その能力を駆使していたようですね。…母親の私はそれに気づかす、何もできないで…。ううっ…」

「お母さん…」

ここで鬼島の母親は一気に嗚咽した…。
奈緒子は、和田に会釈して母親を玄関脇で抱きかかえるような態勢を取った。

”鬼島は母親に息子が罪を犯し、罰せられたという烙印を押させないことを優先し、自分の屈折した達成願望は自ら命を断つことで実行できる手段を探り当てたんだ。彼がこの世で熟練させた、負のエネルギーを最大限に駆使できる呪いの拡散計画を…”

和田は、鬼島をあの狂気じみた呪い掛けに駆り立てたものの正体を、概ねアウトラインまでは掴んだ感触を得た。
だが、この後…、鬼島の母親の口からは、まさに二人の耳を疑うサプライズが飛び出すことになる…。