その3


「‥そうですか。要は100晩を数えられったんですね?だから、ゴールは確認できて、それ以降は夢の中で殺されなかったと…」

「くびれた柳の場所とか、その絡みでは100回ぴったしで終わりました。でも、最初に言った通り、あの手紙以前も死んだり殺されたり悲惨な訳わかんない夢はしょっちゅうだったので、その辺は含んでおいて下さい」

「わかりました。しかし、あらためて、あなたは凄いですよ。一晩で発狂するくらい恐ろしい夢で殺されるリアルを呪いの枠内で突きつけられて、100回をクリアして自殺を免れた…。今、この現象で苦しんでる人への希望にもなり得ますから」

「あのね…、あの100晩を乗り越えた後、いったん白紙になった大口の取引が復活しましてねえ…。変な話だが、オレ、あの百夜殺されたこと、悪い思いはないんです。返って、感謝してるくらいかな。オレを選んでくれた丸島に…。ある意味、怖いものがなくなったから、仕事も盛り返せた面もあったのかなってね…」

”和田さんと私は、目が点になった顔を見合わせてたわ(苦笑)。とにかく、100晩夢の中で殺されることを耐え凌げば、呪いは消える…。呪い主の鬼島はそのルールを守ったことは証明できた…”


***


”しかし、最後の和田さん、あんな大胆なことまで水野さんにぶつけるとはおもっ手もなかったわ…”

「あのう、最後にこれは聞き流す程度で構いませんので、伺わせ下さい」

「なんでしょう?」

「私どもの知る限り、唯一、百夜殺しの呪いをクリアして生存されてる水野さんを見込んで、もし今、開けずの手紙を送る相手を決めかねる人から、あなたに手紙を送っていいですかと頼まれたらどうですか?」

「ハハハ…、さすがに即答できないな…。でもね、丸島がそちらから聞いてるような壮絶な覚悟で、その元教え子からの呪いの鎖を断ちきるために身を投げうった…。オレの方は、こういう縁で結果的にその関連をプラスにできた。なら、丸島の意思を受けて行動しているあなた方の力になることは、やぶさかじゃないですよ」

”私は胸がはち切れそうなくらい嬉しかった。たぶん和田さんも…。その後、しばらく雑談して、水野さんと別れ、帰路に向かう車中に入ったところで、和田さんが思い詰めたような顔でいきなり提案してきたのよね…”