その4


「水野さんは百夜を耐えきったんです。手紙は開封せず破棄、おそらく呼び寄せ夢で手紙を読まされ百夜を課せられたと思われますが、何分、詳しい話は伺っていなかったんです。それで、やっと明日ということです。鷹山さんや国上さんも、彼との検証では手紙の呪いを阻止する糸口が見つかると踏んでいます」

「ぜひ、その辺もよろしく頼みます!和田さん…」

今度は母親が懇願した。

「まあ、他にも、美咲さんの様な状況の方をこの手紙から救える方法はずっと模索していましたから…、不謹慎な言い方かもしれませんが、手嶋との縁とこのタイミングは、美咲さんに味方したとも思えます」

この和田の言で、わずかながら、三浦家親子3人は口元を揃ってほころばせていた。

この後、和田は美咲に戸田アキホとの”関係”をストレートに尋ねたのだが…。


***


「そうですか…。その手紙の差出人とは親しい仲ではなかったと…」

「はい。正直に言えば、お互い嫌いだったかなって気がします」

この美咲の返答は、和田にとって重要ポイントだった。

”手紙を送った戸田アキホという少女は、美咲が本当に呪われても構わないくらいの気持ちがあった可能性はある。その思いの度合いで、あの血のりが浮き出るのかどうかの判断材料になるのかもだ。そうなれば、明日は、水野さんの受け取った封筒に、果たしてシミがあったのかどうかは見逃せないぞ…”

この時点で和田は、これまでの症例ごと、起こる側受け取る側で複雑かつ微妙に違いが生じていることの意味に注目していた。

それはこの呪いの一次念じ手である鬼島則人が、二次以降の呪いの輪にどこまで直接”関与”しているかの解明ヒントとなり得るのだから…。