その3


しかし、奈緒子はたじろぐことなく、すぐさまこう切ってかえした。

「武藤先生、これは緊急対応を迫られている事案なんです。ここ直近の中高生の自殺急増は、都の教育委員会も強い危惧を抱いています。ましてや、その自殺件数はですよ、東京西部、中でも我が校近隣の地区がダントツなんです。この事態に目を背ける訳にはいきません!」

「…」(一同)

「…であれば当然、この関連事案は、特例的な迅速措置も対応する柔軟な姿勢を持ち合わせるべきです。…こういった捉え方は適切ではありませんが、仮に本校で一週間に同学年同クラスで複数自殺者が出たとすれば、その時点で、生徒への何らかの方策を打っいたか否かで、教育委員会の我が校への目も違ってくることはあるんじゃないでしょうか?」

奈緒子はこのタイミングで、後段の殺し文句をぶちだした。
すると、即座に教頭が反応するのだった…。


***


「まあまあ、野坂先生…、先生のおっしゃる意図と熱意は皆さんにも十分伝わってますから」

教頭がこう発言すると、その場からは苦笑いが漏れた。
それは複数の捉え方からだったようだが…。

「うーん、じゃあ、他の皆さんからも意見をもらった上で、野坂先生の提案を図ろうじゃありませんか」

ここで年配男性教師の塩崎が発言に立つ…。

「私は客観的に見て、今般の中高生を中心とした自殺の急増は極めて深刻な社会問題だと捉えています。実際、本校でも連鎖自殺現象は明日にでも起こりかねませんからね。従って、まずは緊急に生徒たちからのまあ、駆け込み寺的な生徒の目線に立った窓口を早急にという視点では、野坂先生の案に賛成です」

これに続いて、奈緒子への援護射撃の機と見た手嶋が挙手した。