その2


そして…、その日の職員会で、さっそく奈緒子は動いた。

「…確かに野坂先生のおっしゃる主旨はよくわかります。まあ、生徒とのホットラインという点で養護の佐久間先生を窓口にという案も、私は反対しません。しかし、こういった態勢を学校として敷くとなれば、PTA等各方面の影響とかも考慮しないと…。今日のところは、継続議案として、校長先生が出張先から戻られて、検討ということでどうでしょう?」

ベテラン教師の武藤は、即決を求める奈緒子をけん制した。

「教育現場の最前線を担う我々にとって、ここ最近の中高生による連鎖自殺問題への対応は、もはや緊急性を求められています。先ほどの手嶋先生に相談を持ちかけてきた女子生徒は、前任校の生徒なんですよ!深刻に悩んでいるのに、現在通う学校ではなくてです」

ここで、武藤をはじめ、数人の教師が奈緒子から目線をそらしてしまった。


***


「手嶋先生がお通夜で生徒の身を案じる発信をされたことで、幸い彼女はSOSを吐き出せたんです。こういったデリケートな問題はスピード最優先で、先ず生徒の目に届くケア窓口を設けないと…。まずはとりあえず目に見える形を作ることが大事なんです」

まさに野坂奈緒子は取り憑かれたように熱弁を振るっていたが、職員間の受け止め方は一様ではなかった。

「…佐久間先生には事前に本件の了解をいただいておりますので、教頭先生、校長先生の了解を得ること前提で、承諾をいただけませんか?」

「野坂先生、いくら何でも学校側の対応を決めるプロセスを軽視するのは控えていただきたいですな」

ここで再び武藤が強い口調で反論を唱えた…。