その1



『ああ、奈緒子さん…。今、生徒の家を出たところだ。それで…』

「…じゃあ、和田さん、その女子生徒は”例の手紙”を開けてなかかったんですね!」

『ええ、2番目に自殺した戸田アキホという生徒から届いた”開かずの手紙”の実物は、この目で確かめました。未開封です。ただ、赤い血のりはついていました。三浦咲子というその生徒と両親にも承諾を得て、現物は預かってます。…オレはこの足でこの手紙を鷹山さんに届けてくるよ』

「ご苦労様です…。それで、手嶋先生は…」

『今、家族といろいろ話をしてます。…今日はヤツ、精神的にも辛かったと思う。明日、学校で湿気たツラ晒してると思うが…、野坂先生、手嶋を元気つけてやって下さい…』

「はい、承知しました」


***


『…それで、今日、その三浦咲子って子に聞いたことですが、彼女は故人の差出人とは昨年同じクラスだったそうですが、さして親しくなかったと言ってました。むしろ、互いに嫌い合っていた…、そんな関係だったと…。奈緒子さん、これって単純に捉えれば、開かずの手紙を送る立場からすると、”本気度”が高いってことは言えるんじゃないですかね?』

「えっ…?なら、和田さん、ひょっとしてその血のりは”その気持ち”の度合いが関係してると…、そうおっしゃるんですか?」

『あの血のりは、丸島の場合で言えば、開かずの手紙を開封させる動きをしていたんです。要するに、昨日お見せした鷹山さんに提供された”血のりなし”との違い…、これは、”宛先”の相手に対する、恨みの度合い加減があるんじゃないかとね…。まあ、この辺は鷹山さんと国上さんの見解をよく聞いてみますが…』

奈緒子と和田のスマホ会話はまさにディープを極めていた…。