この恋がきみをなぞるまで。






梅雨時期になると毎年、体調を崩すから今年もそうだとは思っていた。

体調というよりは、腕がずっと鈍痛を湛えて、体を動かすのも怠くなる。


涼花に毎日のノートを写真に撮って送ってもらっているから、授業の遅れは心配いらない。

桐生くんからも何度かメッセージが入っていた。

毎日決まった時間にコンスタントに送られて来るメッセージには、教室であった面白かったことなんかも添えられていて、元気付けようとしてくれているのが伝わる。


今日はそばにいると言って朝からわたしのベッドにしがみついていた昴流は日和さんと一緒に学校へ行ったし、夕方まではひとりの時間だ。

寝そべったまま、大学のホームページを眺める。

進路はまだ、決まっていなくて、第一志望に書いた大学とは別の学校も色々と調べているけれど、どれもピンと来ない。


涼花は情報系の専門学校、桐生くんは教職を目指しているらしく、教育学部を志望していた。

相原さんは、わたしにはあれこれと聞くくせに自分のことはあまり喋らなくて、実は決まっていないのではないかと勘繰っている。


やりたいことよりも、この腕でどこまで、何ができるかを考えてしまうのもいけないのだと思う。


選択授業で受けた歴史の授業は面白かった。

世界史も好きだし、でも以前相原さんに話したように、面白い、で止まってしまう。


何か資格を取れたら、とも思うし、休んでいる間の時間も有意義に使いたくて調べているけれど、頭まで痛くなってくる。


調べては悩んで、時々眠ってを繰り返し、日和さんの用意してくれていた昼食を食べて、部屋には戻らずにリビングのソファに座る。


この家を出るかどうかも、考えなければいけない。

家族だと言ってくれるふたりはあたたかくて、居心地は良くて、それでも線引きは消えないし消さなくていいと思っている。


ひとりで生活するとなると不便は多いだろうし、結局日和さんに頼る部分も出てくる。

それなら家から通える場所へ、だなんて、まだ他に決めることを差し置いて迷っていると、涼花から午前中の授業の写真が送られてきた。

ノートを書き写して、課題も進めているとあっという間に時間が経っていて、玄関から聞こえた物音に顔を上げたときには18時を過ぎていた。