ぼうっと湖を眺めている桐生くんの肩を、不意に涼花が小突く。
「なんだよ」
「誘っといて辛気臭い顔しないでよ」
「いや、失礼だな」
クラスは離れているけれど、中学から一緒というだけあって、涼花も桐生くんも冗談を交えながら話している。
「芭流、こっち見て」
「え?」
気付いたら、涼花は携帯をインカメラにして持っていた。
3人が写り込む画角を調節して、ちょうど後ろに咲いていたコキアも綺麗に入った瞬間にパシャリと音が鳴る。
「桐生、写真送るから。連絡先出して」
「いいって」
「早くして」
有無を言わせない涼花に桐生くんはさっさと折れて、携帯を操作する。
写真もその場ですぐに送ったようで、時間を確認した涼花が立ち上がる。
「バイトが入ったから先に行く」
「え、涼花今日休みじゃなかったの?」
「この後だから昼間は空いてたし。楽しかった、これも大事にするからね」
これ、と涼花が揺らした紙袋にはハーバリウムが入っている。
色違いでお互いに買って交換したそれは、わたしの鞄の中にもある。
さっさと園内を出ていく涼花を見送って、静かな桐生くんを見ると、携帯を握ったまま画面に目を落としていた。
「桐生くん……?」
「え、なに?」
「涼花、帰っちゃったけど……」
「バイトって言ってたっけ。どうする、福澄さん。もう少し見て回る?」
ほんの少し見えてしまった画面には、先程交換していた涼花の連絡先が表示されていて、何となく今日の桐生くんの様子が妙な理由もわかってしまう。
「桐生くんって、涼花のこと」
「待って待って、言わないで」
「好きなんだ?」
言わないで、と桐生くんが慌てるのも構わずに口にすると、顔を真っ赤にしてマフラーに顔を埋める。
「涼花と仲がいいから、わたしのこと……」
「それはちがうよ」
最初に見かけたときは涼花と一緒にいたし、そういう理由でもおかしくないと思ったのだけれど、桐生くんは遮ってきっぱりと言い切った。
「福澄さんとは仲良くなりたかったんだ。そりゃあ、きっかけは千里がやたらと気にしてたからだけど、今日だって柚木に声かけてくれたのは福澄さんだし」
「そうだった」
最初から、桐生くんが誘ったのはわたしだったことを思い出して、外れてなかったからいいものの、一歩違えば盛大な勘違いだったことを思うと今度はわたしが真っ赤になる。



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