わたしがここに通っていたのは3年ほどで、きっかけはお母さんがすすめてくれたことだった。
3年の間にお母さんは亡くなって、お父さんと二人きりになってからはなかなか来られない期間もあったけれど、城坂くんと同じ日、同じ時間に先生に習っていた。
「どこに行っていた」
目は閉じたままだけれど、その質問が出てくるということは、先生はわたしを覚えている。
恵美さんは退室して、部屋にはわたしと先生だけ。
わたしが引っ越したあとにいた所在地を伝えると、次の質問が飛んでくる。
「父親はどうした」
「亡くなりました」
「今はひとりか」
「叔母と従兄弟と暮らしています」
「いくつになった」
「……17歳」
あれからもう、7年が経つ。
わたしが何も言えないまま、ここを離れてから。
お世話になったのに礼儀もなっていないと、今更だと、言われるだろうか。
そんな覚悟をしてぎゅっと目を閉じるけれど、先生は何も言わなくて。
そっと目を開けて顔を上げると、先生は穏やかな表情でわたしを見つめていた。
「大きくなった、芭流」
「先生、やっぱり……」
「忘れるわけがないだろう。あの落ち着きのない子が随分と淑やかになった」
「先生先生、あのね」
落ち着きなさい、とたしなめる声も聞かずに、これまでのことを話す。
ほの暗い話題はどうしても、他の人には伝えにくいけれど、先生には何故かすらすらと言葉が喉を滑っていく。
先生は終始、船を漕ぐように頷きながら、時折何かを探すように遠くを見ていた。



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