「……おい、おい、花崎どうした?」
 「……ん?あ、ごめん。資料は午後イチで渡せるように探しておく。」

 「ああ、悪いな。頼むよ。さっきの人かもな?」
 「……うん、そうかもね。」

 フロアでは、人事部の女性も騒いでいる。
 亮ちゃんはイケメンだ。
 180センチを超える身長。高校時代からそうだった。元バスケ部。

 以前私の家の近所に住んでいた。
 お姉ちゃんは昔から亮ちゃんが大好きだった。
 同い年で高校時代同じバスケ部に入って、いつも朝練から一緒に行っていた。

 付き合っているのかと思っていたが、ある日泣きながら部屋にこもるお姉ちゃんが亮ちゃんからフラれたと聞いた。
 私は亮ちゃんが好きだったが、お姉ちゃんが亮ちゃんと付き合いたがっていたから、妹ポジションで我慢していた。

 亮ちゃんは、私を何故か構いたがった。
 時にはいたずらをされて、ものを隠されたり、揚げ足取られて笑われたり。

 でも最後には頭を撫でてくれて、「雫はかわいいな。怒ってもハムスターみたいにほっぺ膨らませて、小さい身体でちゃかちゃか動いていつの間にか笑ってる。……癒やされるよ。」と言ってくれた。

 それが、私が高校一年のときだった。そして二年生になるとき、高野家は海外に引っ越した。

 お父様はアメリカ勤務だったが、お母様と亮ちゃんはおうちの隣がお母様の実家だったので、日本にいたのだ。
 大学はアメリカに留学するので、お母様もお父様のところに亮ちゃんと渡米することになったと聞いた。