その甘さ、毒牙につき


聞き間違いかと思った。



だって、瑞樹くんの言葉があまりにも私に都合がよすぎるから。



瑞樹くんをまっすぐ見つめる。



いつもの無表情が、少し崩れていた。



照れ顔でも怒っている顔でもない。



不安そうで、目を離したら消えてしまいそうな…そんな顔。



「瑞樹くん、それって……」



瑞樹くんの気持ちを確かめたくて聞こうとしたのに、ぷいっと顔をそらされた。



「今日、一緒に帰ろ」



「へ…っ?」



会話の脈絡を無視した瑞樹くんの質問に、間抜けな声が漏れる。