果たして


「覚えているだろうが、昨年の株主総会の後、私はお前に、2年後の総会が今日のように穏やかに終了できるようにしろ。社内はもちろん、株主にも何も言わせないような実績を示せ。そう言ったはずだ。」


と厳しい口調で圭介が切り出した。


「はい。」


「その為にお前が繰り出した第一の矢が今回のプロジェクトだったわけだ。」


「はい。」


「社内のライバルである会田の鼻を明かしたのは、さっきも言ったように見事だったが、しかし少し時間が掛かりすぎたな。」


「えっ?」


「父親としての俺は、息子のお前に後を譲りたいとは思っているが、会社の創業者としての俺は、会田を自分が去った後の会社を託す候補の1人として育てて来た。アイツがお前の片腕となれば、怖いものはないと思うが、まだそこまで会田はお前に心服してはいない。まだまだこれからだ。」


「はい・・・。」


評価から一転、厳しい指摘を受け、圭吾がやや意気消沈気味に頷いていると


「ところでだ、お前、藤堂さんとはどうなっているんだ?」


いきなり話題が別の方向を向く。


「えっ?」


「その様子じゃ、まだモノにしとらんようだな。」


「・・・。」


「その方面も遅い。」


父に決めつけられて、言葉を失う圭吾。


「まぁいいだろう。それより、これから話すことは絶対にまだ他言無用、他の取締役連中にはもちろん、藤堂さんにもだ。その為に、わざわざ家に来てもらったんだ。いいな。」


厳しい表情で言い出した父は、隣のキッチンの母にも聞かれないように、声のボリュ-ムを落とした。やがて


「本当、ですか・・・?」


驚きを隠せない圭吾に、圭介は荘厳な表情のまま頷いた。