そんな七瀬が、今年久しぶりにバレンタインデ-を意識している理由は2つ。義理チョコ文化全盛期を20代OLとして過ごした秘書課長が主導して、秘書室から各取締役にチョコを贈る風習があることを知って、驚いたのが1つ。
そしてもう1つは、贈りたい、贈るべきなんじゃないかと思える男性が2人いるからだった。
このところの七瀬と圭吾の関係は、「ただの副社長と秘書イコ-ルバディ」に終始していた。勤務中はもちろん、時間外でもプライベ-トな会話を交わすことはなくなり、連れ立って退勤して行く姿も見せなくなった。
社員たちは、そんな2人の様子に当然気付いて
「どうも破局したみたいだよ。」
「まさかなぁ・・・お似合いだと思ったんだけどなぁ。」
「藤堂さんが振ったらしいよ。」
「えっ?俺は副社長の方が、他に目移りしたって聞いたけど。」
「まぁ、どっちにしても、あれじゃお互いやりにくいだろうな。」
「そうだよねぇ。」
などと、無責任なことを噂していたが、事実は全く想像だにしなかった事態に直面して動揺している七瀬を慮って、圭吾が一時的に距離を置いてくれているからに他ならなかった。
「前に進む。」
沙耶にそう宣言してから、はやひと月が過ぎた。圭吾の思いやりと優しさには感謝していたし、彼の自分に対する想いの真剣さを改めて感じ、その真摯な態度に応えなくてはと切に思ってはいたが、この間、七瀬はそのことで動くことはなかった。専一に仕事に取り組みながら、あるタイミングを待っていたからだ。
1つは、圭吾にとって、愛奈にとって、そして自分にとっても大事なプロジェクトに1つの区切りを迎えるのを。そしてもう1つは弥生の四十九日だった。
このプロジェクトの目途が立ったら、圭吾に辞表を出す。愛菜にそう告げたことを七瀬は忘れてはいない。あの頃は、ただ身を引くのがいいのだと思っていたが、それはかえって圭吾に対しても、愛奈に対しても不誠実なことなのだと思い知らされた。
だとしたら、まず自分の大和への想いに決着を付けることが必要だった。本当はせめて一周忌までは待つべきかもしれなかったが、弥生が埋葬され、仏様になる日が、ほぼ同時にやって来るこの機会を逃すことは出来ない、七瀬はそう思い定めていたのだ。
そしてもう1つは、贈りたい、贈るべきなんじゃないかと思える男性が2人いるからだった。
このところの七瀬と圭吾の関係は、「ただの副社長と秘書イコ-ルバディ」に終始していた。勤務中はもちろん、時間外でもプライベ-トな会話を交わすことはなくなり、連れ立って退勤して行く姿も見せなくなった。
社員たちは、そんな2人の様子に当然気付いて
「どうも破局したみたいだよ。」
「まさかなぁ・・・お似合いだと思ったんだけどなぁ。」
「藤堂さんが振ったらしいよ。」
「えっ?俺は副社長の方が、他に目移りしたって聞いたけど。」
「まぁ、どっちにしても、あれじゃお互いやりにくいだろうな。」
「そうだよねぇ。」
などと、無責任なことを噂していたが、事実は全く想像だにしなかった事態に直面して動揺している七瀬を慮って、圭吾が一時的に距離を置いてくれているからに他ならなかった。
「前に進む。」
沙耶にそう宣言してから、はやひと月が過ぎた。圭吾の思いやりと優しさには感謝していたし、彼の自分に対する想いの真剣さを改めて感じ、その真摯な態度に応えなくてはと切に思ってはいたが、この間、七瀬はそのことで動くことはなかった。専一に仕事に取り組みながら、あるタイミングを待っていたからだ。
1つは、圭吾にとって、愛奈にとって、そして自分にとっても大事なプロジェクトに1つの区切りを迎えるのを。そしてもう1つは弥生の四十九日だった。
このプロジェクトの目途が立ったら、圭吾に辞表を出す。愛菜にそう告げたことを七瀬は忘れてはいない。あの頃は、ただ身を引くのがいいのだと思っていたが、それはかえって圭吾に対しても、愛奈に対しても不誠実なことなのだと思い知らされた。
だとしたら、まず自分の大和への想いに決着を付けることが必要だった。本当はせめて一周忌までは待つべきかもしれなかったが、弥生が埋葬され、仏様になる日が、ほぼ同時にやって来るこの機会を逃すことは出来ない、七瀬はそう思い定めていたのだ。


