「じゃ、早速行こうぜ。時間がもったいない。」


ウェイタ-が立ち去るのを待ちかねたように大和が言う。


「うん。」


それに七瀬が頷いて、2人は席を立つ。そして会場を一回りした2人は、トレイにいっぱいの料理を乗せて、席に戻って来た。それを見計らったようにアルコ-ルドリンクが2人の前に置かれ


「じゃ、七瀬。26回目のバースディ、おめでとう。」


大和が言うと


「わざわざ、改めて年齢を言わなくていいよ。」


七瀬がやや膨れ気味で答える。


「別に今更、恥ずかしがることないだろ?俺たちは同い年なんだから。」


「そりゃそうだけど・・・。」


「ま、俺は26になるまで、あと3ヵ月ほどあるけどな。」


「そんなとこでマウント取らないでよ。」


「昔のちょっとしたお返しだよ。」


「なにそれ!」


「ハハハ・・・じゃ乾杯。」


まだ膨れている七瀬に、笑いながら大和がグラスを上げる。それを見て、七瀬も機嫌を直したように


「今日はご招待ありがとうございます。」


笑顔でそう言って、軽く頭を下げた。


幼い頃から小学生の間は、お互いの誕生日は両家合同で祝ってもらっていた2人だったが、中学に入ると、家族とのそれとは別に、2人だけの誕生会を学校帰りにファーストフードの店やファミレスで催すようになった。その当時は先に年齢を重ねる七瀬の方が


「これで私の方がお姉さんだね。ちゃんと敬いなさいよ。」


と揶揄って、大和を悔しがらせていた。しかし時が流れ、大人になった今は、若さを競い合うようになり、立場が逆転した。さきほどの大和の言葉はそういう意味だったのだ。


「遠慮しないで、じゃんじゃん食ってくれよな。」


「言われなくてもそうするよ、バイキングなんだから。」


2人が高校生になってすぐに、学校の最寄り駅近くにバイキングレストランが出来た。行ってみたいと思ったが、校則でアルバイトを禁止されていた当時の2人には、残念ながら敷居が高かった。


「大学に入ったら、絶対にあそこで誕生会やろうよ。」


「そうだな、その時は任せとけ。」


そんな他愛のない約束は、でも果たされることはなかった。もちろん、大和が弥生と付き合い出して、2人だけで出掛けることがなくなったからだ。