ロープウェイを降りて少し歩くと、目の前には壮大なスキー場が広がっている。汚れ一つない真っ白な雪はどこか美しい。

「どんな感じで滑ったらいいんですか?」

十が不安そうな表情を見せながら訊ねる。桜士はゆっくりと息を吐いた後、十の方を向いて笑った。

「まずは手本を見せる。教えるのはそれからだ」

そう言った後、桜士は前を向いて地面を蹴り、雪道を滑っていく。頰に当たる風が冷たい。だが、まるで鳥になって空を飛んでいるかのように心地いい。桜士の顔に笑みが浮かんだ。

(気持ちいい……)

気が付けば、十からかなり離れたところまで滑り降りてしまった。慌てて桜士はスキー板を止め、十のところへと帰る。

「こんな感じだ」

「いや、見てるだけじゃわかりませんよ」

十がそう言い、桜士は十に転び方から滑り方まで一つずつ教えていくことにした。すると、「お兄ちゃん上手だね、教えて!」とどこから見ていたのか、小学生たちが群がる。キラキラと輝く瞳を向けられては、断れない。本田凌はそのような人物だ。