もう一度、君の笑顔を。






「あれ、今日は荷物少ないじゃん。」



19時。紫月が迎えにきた車に乗った。

変わらずいつもの笑顔で迎えてくれた紫月に、胸がズキズキと痛む。




「あ……うん。あんまり準備する時間なくて。」


「全然時間遅らせたのに。」


そう言って私に優しく微笑む紫月。

こんな些細な一言でさえも優しさを感じてしまって、胸が苦しくなる。


すると紫月のスマホが鳴って、紫月が電話に出た。

また仕事の電話かな……。



「なに。………ああ。いま翠といるけど。」



紫月は仕事の電話を無視することはない。

私と一緒にいる時の紫月も好きだけど、仕事の電話をしてる時の紫月も割と好きだったりする。


でも出る時は、私を1人にしないためか、必ず手を握ってくれる。



「は?……他のやつに頼めよ。……ったく、わかったよ。……ああ、あとでな。」



電話を切って大きくため息をついた紫月は、


「悪い、翠。冬馬の仕事の関係で、翠に手伝ってもらいたいことがあるらしい。」


明らかに不機嫌な顔つきな紫月。



「ん?……なんで私?」


「冬馬の会社は、来年駅前にできる商業施設の企画に携わってるからな。その視察で、女性目線の意見がほしいって。」


女性目線とはいえど……なんで私なんだ……。

絶対参考になる意見は言える気がしないんだけど……。



「なるほどね……。でも、なんか冬馬さんなら分かりそうな気がするし、頼む女の子なんていっぱいいそうだけど。」


「あいつが分かるわけねえよ。女のこと女だと思ってないし。」


「え……あの、冬馬さんが?」


「俺らや翠にはあんな感じだから分かりづらいけど、他のやつの前では腹黒いし冷酷な別人。」



人が見かけにはよらないことは、彪雅の事で十分理解したつもりだったけど、あんな可愛らしい冬馬さんにも裏があったなんて………。

ほんとに人は見かけによらないんだと痛感する。


「そういえば……4人っていつからの仲なの?」


紫月は運転手の人に行き先を変えるよう指示をしてから私の方に向き直った。


「俺と暁良は親同士と会社の繋がりが強いから、小学生より前に出会ってたっぽい。この4人になったのは小学生のときだな。」


「へえ。」


紫月の小さい頃か……あんまり想像できないけど幼い時もイケメンだったんだろうな。

少し見てみたい気もする……。