彪雅だったら絶対にありえない状況に、びっくりしてしまって。
「……殴らない、の?」
「は?」
そう言えば、また不機嫌そうな顔に戻って
「好きな女殴るなんて、……翠にいくら頼まれたってしないよ?」
当たり前だろって言い方。
紫月の言葉や言い方に、私はひどく安心してしまって。
付き合ってはいないけど、男の人はこういうときに必ず人が変わるもんだと思ってた。
「帰ったら、ちゃんと殴られたとこ見せて。」
「もう痛くないから大丈夫だよ。元はと言えば、挑発した私が悪いんだし。」
「……もう言わないで。」
ちゅっと、軽くキスをしてきた。
まるで飼い犬みたいに黙ってしまう私は、すっかり紫月に従順な女になってしまった。
「翠が悪いことなんて一つもないんだってば。」
