「嘘……唯一のオアシスが……」
「ほら、ラティ。イライザたちが行動するよ」

 そうだ、今は絶望感に浸っている場合ではない。ジルベルト様がイライザ様の夫に認められるように尽力しなければ。すでにバハムートは目標をイライザ様たちに定めて、攻撃を仕掛けていた。

 その場にいた貴族たちは逃げ出し、警備の騎士たちがドラゴンを倒せる猛者を連れてくるため走り回っている。人数を集めるのも多少時間がかかるはずなので、その間にケリをつけたいところだ。

 私たちは騒ぎに便乗して、フィル様が幻惑の結界を張ってくれたので、周りからは姿が見えないようになっている。これでいざという時に、すぐに助けにいけるようにしていた。

 余裕で古竜を倒せるジルベルト様の動きが、なんだかおかしい。どうやらアリステル公爵様が横から口を出して、行動を制限しているようだ。
 本気で攻撃を仕掛けるバハムートは、今まで見たことがないくらい恐ろしい。ジリジリと嫌な汗が背中を伝った。

「ゔああああっ!!」

 ついにジルベルト様が、バハムートの攻撃を受けてしまった。ふたりを庇って、バハムートが吐き出したブレスを正面から受けてしまったのだ。その場に倒れ込むジルバルト様を、イライザ様が泣き叫びながら抱きしめている。
 私とフィル様も緊急事態に結界を解いて駆け寄った。