婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。


「……………………え? バハムート?」

 私の思考が完全に停止した。
 見間違いかと思って、何度もまばたきしてみたけれど、間違いなく私の秘密の友人であるバハムートだ。

「うん、僕のペットだよ」
「はあ!? なんで!?」
「王城の中で不思議な魔力の気配があったから会ってみたら、ラティの友人だと言ったんだ。だからラティのそばにいたいなら僕と主従関係を結べと言ったんだよ?」
「どうして、いったいなぜ……!?!?」

 いや、もう、なにから突っ込んでいいのかもわからない。そもそも幻獣と主従契約など結べるものなのか?
 待て待て、論点はそこでいいのか? 私が持ち込んだ幻獣だとバレてる時点でマズいのではないだろうか?

 そんな疑問を吹き飛ばす答えが、フィル様から発せられる。

「だってアイツは雄でしょう? 僕の命令に絶対服従するくらいでないと、心配でラティのそばに置いておけないよ」

 それが理由……!? 雄だから? ねえ、雄だからダメだったの!?
 久しぶりに絶望感に打ちひしがれた。