あれから十日後、ついに第二の作戦の決行日がやってきた。
 この日はイライザ様がジルベルト様を護衛にして王城までやってくる。私とフィル様は待ち合わせ兼現場になる予定の庭園の東屋で、先に待機していた。

「フィル様、いよいよ今日ですね」
「うん、もし怪我人が出たらラティに頼めるかな?」
「もちろんです! 治癒士こそが私の本分ですから!」

 いつものようにお高い茶葉の紅茶をすすりながら、これまたお高いマドレーヌを口に頬張った。じっくりと味わって嚥下するタイミングで、イライザ様とジルベルト様、それからアリステル公爵様の姿が見えた。
 その瞬間、雲が太陽を遮ったようにあたりが暗くなり、空気を切り裂くような悲鳴が上がる。

「うわあああ!! 魔物だ!! 魔物が出たぞ!!!!」
「きゃああ! た、助けてっ!!」
「なんだこの魔物は!?」
「ドラゴン……ドラゴンだっ!!」

 ついに来た! フィル様のペットだ!
 強い魔力を感じたので視線を向けると、ほんの十メートルほど上空に銀翼のドラゴンがいた。青い瞳でギロリと周囲を睨みつけ、大きな口を開けて咆哮をあげる。