私がフィル様の寵愛を受けているという噂がアリステル公爵の耳にも入ったと聞いたのは、お茶会から一週間後のことだった。

「やっとお父様の耳にも入って、事実確認のためにわたくしのもとへ来ましたの。ですから悪態をつきながらおふたりの愛の深さをお伝えして、わたくしがフィル様に殺されそうになったとお話ししましたわ」
「それで、アリステル公爵はあきらめた?」
「うふふ、これ以上逆らえば本当に消されると気付いたらしく、項垂れておりました!」
「よかった! 第一関門突破ですね!」

 本当によかった……あの時、心身を削った努力がこうして実になった。
 しかし満面の笑みで父親の計画が頓挫したと語るイライザ様に、フィル様と同じ匂いを感じる。ふたりの話がポンポン進むのはそういうことかと、たった今理解した。せめて敵にならないようにしようと、心に決める。

「そうか、やっと理解してくれたんだね」
「おかげさまで、後はジルをわたくしの夫に認めさせるだけですわ」
「ジル様は護衛騎士ですよね? それなら剣の腕で認めてもらうのはいかがでしょうか?」
「そうだな、それなら僕にいい考えがある」

 私とイライザ様の視線がフィル様に向く。うっすらと黒い笑みを浮かべて、腹黒王太子は計画を話しはじめた。