三週間後、イライザ様から届いたお茶会の日になった。
 フィル様が手配したお茶会用のドレスは、淡いパープルのドレスに黒いレースとリボンの飾りがついたものだ。フィル様はリーフ柄が上品なジャガード織りの黒いジャケットを羽織り、胸元には淡いパープルの花の飾りが添えられている。
 どこからどう見ても仲のいい婚約者にしか見えないが、これも作戦のうちだと言われた。

 そして私はアリステル公爵家へ向かう馬車の中で、ようやくこの計画の全貌を聞かされる。その内容に絶句し、あの一瞬でよくそこまで考えられるものだと感心してしまった。イライザ様にはすでに詳細を伝えてあるらしい。

「はあ……本当に腹黒」
「うん? なにか言ったかな?」
「いえ、なんでもありません」

 つい本音がこぼれてしまった。慌てて知らないふりをする私を、フィル様はうっとりと見つめてくる。

「ああ、ちなみに腹黒は僕にとって褒め言葉だから」
「聞こえてた……!?」
「王太子教育のおかげで、読唇術もできるんだ」
「いやいやいや、そのスキル今すぐ破棄してください」
「それは難しいね」

 そんなやりとりをしている間に馬車は公爵邸へとついてしまった。これからイライザ様の愛を叶えるための、作戦が始まる。
 私は気合を入れて、馬車から降りた。