イライザ様の説明に深く納得すると、フィル様が珍しくムッとした顔になった。珍しいなと思って見ていたら、またいつもの甘ったるい微笑みを浮かべて耳触りのいい言葉を並べた。

「まあ、そんなものがなくても、僕はいつでもラティの味方だけれどね?」
「そうですか、ありがとうございます」

 当然いつものように華麗にスルーだ。なんの気持ちも込めないで即返答する。

「うふふ、さすがのフィルレス殿下も苦戦しているようですわね」
「ははっ、これはこれで楽しいけどね」

 イライザ様の苦戦の意味がよくわからないけれど、フィル様に楽しまれているのが腹立たしい。さっきからイライザ様とはよく理解し合っているようだし、婚約者は私でなくてもいいのではと強く感じる。

「ではラティ、茶会で着るドレスを選ぼうか?」
「それでは、わたくしはお茶会の支度をしてまいりますわ。ラティシア様にだけ招待状をお送りしますので、よろしくお願いいたします」
「うん、頼むよ」
「よ、よろしくお願いいたします」

 そう言ってイライザ様は執務室を後にした。フィル様から今回の作戦の全貌を聞こうとしたのに、当日のお楽しみだと言って教えてくれなかった。