さて、覚悟を決めたのはいいものの、今の私になにができるのだろう?

 そもそもアリステル公爵に会うことができるのか? 本当に気がすすまないけれど、フィル様の婚約者である立場を使ったら面会くらいはできるだろうか。
 例え会えたとしても、フィル様の婚約者である私が説得するのはかなり難しいかもしれない。

「いったいどうすれば説得できるのかしら……」

 ひとり言のように呟いた言葉に、フィル様が答えてくれた。

「そうだね。基本的に貴族たちは僕に逆らわないから、ラティが僕の寵愛を受けていると見せつけるのが、一番手っ取り早いね。邪魔するようなヤツがいたら遠慮なく処分できるし」
「そうですわね。その後でジルを認めさせるよう、山場を作りましょう」
「え? あの?」

 フィル様は寵愛を見せつけるとか、邪魔なヤツは処分とか過激なことを言うし、イライザ様も当然のように受け止めて山場を作るとか乗り気になっている。もしかして王族や高位貴族の方々にとってはこういうのが普通なのだろうか?
 私が困惑していると、それに気付いたフィル様が優しく微笑んで、そっと手を握ってきた。大丈夫だよと言うように私に温もりを与えて、話を続けていく。