「今も痛む僕の心がわかったかな?」
「心拍は少し早いようですが、問題なさそうですね」
「そう? 残念だなあ、この悲しみが伝わらないなんて」

 嘘くさい。
 まったく残念そうに見えないし、むしろ嬉しそうに笑みを浮かべているとしか見えない。これが本当に相思相愛の婚約者なら嬉しいだろうが、あいにく私にこの腹黒王太子と結婚する気はまったくないのだ。

「もうよろしいですか?」
「ふふっ。今の冷たい態度が僕のものになった時にどう変わるのか、楽しみだな」
「はい?」
「さあ、そろそろ政務に戻ろう。ラティは前回のようにここで待機していて」

 なにか腹黒いセリフを聞いたような気がしたけれど、はぐらかされてしまった。さすがに政務に取り組むフィル様の邪魔はできない。

 しかし、この職場ストレスが半端ないわ——!!!!
 こうなったらお茶の時間に出される高級スイーツを、もりもり堪能しないと割に合わないわね!! それから部屋に戻ったらバハムートにも話を聞いてもらおう……!!

 腹黒王太子の溺愛に翻弄されて、お茶の時間に出されるお高くて最高に美味しいお菓子で自分を癒した。