隣のマクシス様もラティシアに気付いたのか、これでもかと両目を見開いている。

 ラティシアの身にまとうドレスや宝石が、わたしでは手が出せないほど高級なものだとすぐにわかった。平民のようなラティシアが、なぜあんな格好をしているのか疑問に思う。

「皆、本日はよく集まってくれた。今日は大変めでたい知らせがある!」

 国王陛下の声が会場中に届いた。堂々と王族とともに壇上に立つラティシアを睨むように見つめる。

 嘘だ、まさか、あり得ない。だってラティシアからはすべて奪って追い出したはずだ。最初からいろんなものを持っていたラティシアが憎くてしかたなくて、全部わたしのものにしたはずだ。

「王太子フィルレスの婚約者を紹介する! ラティシア・カールセンだ!」

 それなのに、あの女はまた手に入れたのだ。
 絶対にわたしが手を出せない王太子という宝を。
 絶対にわたしが逆らえない、王太子妃という立場を。
 そしていずれ、あの女が王妃に——

 強く握りしめた拳は怒りで震え、ぎりっと奥歯を噛みしめる。

 あの女……!!
 いいわ、今度は王太子を奪ってやるから、覚悟していなさい……!!