「もう! 本当にうるさいわねっ!! 足りなくなったらナダリー公爵家から借りればいいでしょ!?」
「それでしたらビオレッタ様かマクシス様で、手紙などのご用意をお願いします」
「だったらマクシス様に言ってよ!! 公爵家はマクシス様の実家なんだから!!」
「……承知いたしました」

 大声で叫んで、やっとトレバーが頭を下げて部屋から出ていった。
 伯爵家に長く仕えているからと、ずっと文句ばかり言ってきて本当に面倒な男だ。次になにか言ってきたら、その時こそクビにしてやろう。

 蓄積されていた苛立ちは、トレバーが泣きすがってくる場面を想像したらなんだか落ち着いてきた。あの年でクビにされたら行くところなんてないだろうから、きっと泣きついてくるに違いない。
 トレバーの代わりなどいくらでもいると、切り捨てるのが楽しみだ。

 気持ちが落ち着いてきたところで、今度は蜂蜜入りの紅茶が飲みたくなって呼び鈴を振った。

 メイドがパタパタと足音を鳴らしてやってくるが遅い。わたしが呼び鈴を鳴らしたら、十秒以内に来いと言っているのにとっくに三十秒は過ぎていた。