「……フィル様。今後は妃教育の様子見は禁止です」
「待って、それだとラティと接する時間が極端に減るでしょう!? ただでさえ短いのにちょっとそれは……」
「その代わりに——」

 私は考えた。
 どうしたらフィル様がこの奇行を止めてくれるのか。

 きっと妃教育で、ともに過ごす時間が減ったからなんだと思う。それなら、そんなことが気にならないくらい、一緒にいる時に満足感を与えればいいのだ。

「愛の言葉に、口付けをプラスします」
「なん……だって?」
「朝昼晩、愛の言葉とともに口付けします。ですから、日になん——」
「わかった! それなら様子見は今後しないよ」

 私の言葉を遮り、フィル様が了承してくれた。口付けひとつで政務が滞りなく進み、アイザック様の負担も減るなら万事解決だ。

「では、早速お願いできる?」
「はい……フィル様、愛してます」
「うん、僕もラティだけを愛してる」

 そして私はそっと瞳を閉じた。
 触れ合うだけの口付けなら、すぐに終わる。そう思って待っていたのに、フィル様の温もりがいつまでたってもやってこない。