今日、ついにフィルレス様がラティシア様と想いを通わせた。
 おふたりの甘い時を過ごし、フィルレス様はかつてないほど緩んでいた。ニヤニヤ……いや、ニコニコと始終笑顔で寝所に入る準備のために私室に戻ってきたのだ。

 俺はこの時間まで自由にしていてよいと言われたので、一度屋敷に戻り母にも報告してきた。母もうっすらと涙を浮かべて喜んでいた。
 風呂から上がったフィルレス様が、ぽろりと言葉をこぼす。

「アイザック、夢ではないか?」
「おめでとうございます。フィルレス様。ようやくラティシア様と気持ちが通じましたね」

 ずっとそばで見守ってきたおふたりの新しい門出に、俺も祝福の気持ちをそっと送る。

「どうしよう、頬を染めて僕が好きだというラティが頭の中を駆け巡ってて、なにも手につかない」
「今日くらいはいいのではないですか?」
「あの衝立撤去するか」

 フィルレス様が決意に満ちた瞳で、とんでもないことを言い出した。
 いくら王族といえど、いや、王族だからこそ貞操観念は他の貴族より厳しい。気持ちはわかるが、暴走する主人を諌めるのも側近の役目だ。