ふたりだけになった空間には、自然と甘い空気が流れ始める。私の心臓の音がフィル様に聞こえそうなほど、ドキドキしていた。
私の頬をフィル様の長い指が滑る。指は耳元をくすぐり、肩から腕へ下りて私を優しく抱きしめた。
フィル様の心臓の音が聞こえて、こんなにドキドキしているのが私だけではなかったと安心する。
「ラティ、愛してる。僕は君しか愛せない。だから責任をとってもらうよ?」
「わ、私もフィル様が……好き、です」
「はあ、ヤバい。ラティがかわいすぎてなにもしたくない」
さらにきつく抱きしめられて、フィル様の身体にすっぽりと包まれたようになる。肩の上でぐりぐりと額を擦る様は、まるでペットがじゃれついてるみたいだ。
でもなにもしたくないとはマズいだろう。王太子であるフィル様にやってくる仕事は後を絶たない。
「じゃあ、もう好きって言いません」
「それはダメ! これからも朝昼晩は言ってくれないと!」
「なぜ朝昼晩なんですか?」
せめて一日一度にならないかと、ダメもとで尋ねてみた。
「定期的に聞かないと、不安になってラティを閉じ込めたくなる」
「閉じ込め……!?」
かなり物騒な発言が飛び出した。そんなに不安にならなくても、ちゃんとフィル様だけを見ているのに。