「待ってください! もう決定ですか!?」
「え? だって僕のこと好きでしょう? 問題ないよね?」

 さも当然のようにフィル様は言う。確かにフィル様を好きだけれど、仮にも王族でしかも王太子なのだから、いろいろと根回しとか調整とか、必要なのではないだろうか?

「たしかに好きですけど、展開早すぎだし、問題おおありですよね!?」
「そんな……また好きって言われた……」

 ぽっと頬を染めるフィル様に見惚れそうになったけど、ここで流されてはダメな気がする。

「いやいやいや! 他にツッコミどころ満載ですからね!?」
「なにも気にすることはないよ。ああ、やっと僕のものになったね。愛してる」

 愛を告げられ慣れてなくて固まってしまったのをいいことに、またフィル様の唇が降りてきた。触れるだけの軽い口づけは、私が我に返る前に離れていく。

 それからいまだ動けずにいる皇太子へ視線を向けた。

「あれ、まだいたの? なに、君もこの国で留学したいの?」
「う、うるさい! というか、エルビーナが留学するのに、結婚相手が見つかるまでオレだけ帰れないだろう!」

 皇太子も皇帝から命を受けてきたのか、帰るに帰れない状況のようだ。先程のやり取りで敵対心は薄れたのか、わりと平和的な空気が流れている。