その殺気にも似た魔力を感じ取り、バハムートとフェンリルはピタリと動きを止める。そして強者にひれ伏すように頭を下げた。騎士たちはフィル様の気配の変化を感じ取り、動けなくなっている。

「こ、この魔物を早くなんとかしろっ!!」
「そうですわ! 魔物が——え? ど、どうしてフィルレス様が手懐けてますの?」

 それでも皇太子はフィル様の変化が気にならないのか、わめき散らしていた。そこでエルビーナ様がやっと気が付いたようで、バハムートとフェンリルにも視線を向ける。


「僕の婚約者になにをしている?」


 エルビーナ様の問いかけに返ってきたのは、心臓を抉るようなフィル様の冷たい声だった。