私を守るように立ち並ぶバハムートとフェンリルを前にして、腰を抜かしたのか尻をついて動けなくなっている。騒ぎを聞きつけ騎士たちが集まるが、神竜と神獣だと知られているのでどうということもない。
怯えているのは皇太子だけだ。
「私を守ってくれる、大切な友人です。貴方の妻になるくらいなら、この子たちと誰にも見つからない場所へ行きます」
「なっ、いずれは皇后になれるのだぞ!? こんな小国の王太子妃のどこがいいと言うんだ!?」
そんなことはわかってる。これが権力に執着のあるご令嬢だったら、大喜びしたのだろう。だけど、あいにく私はそんなものでフィル様を好きになったのではない。
「フィル様には驚かされることが多いですが、誠実な態度で私を優しく気遣ってくれました。いつでも、どんな時でも、私の心に寄り添ってくれました! だから私は過去を乗り越え、信じることができたのです! だから私は……!」
あふれた気持ちが雫になって頬を伝う。
本当は離れたくない。このまま婚約者としてそばにいたい。それでも、私がここにいることでフィル様の足を引っ張るのは、自分自身が許せない。
「フィル様を好きになったのです……!」