皇太子とともに通されたのは、国王陛下の謁見室だ。
 大きな太い柱が等間隔で並び、扉から正面の高座までレッドカーペッドが真直ぐに伸びている。国王陛下が椅子にかけて、その左右には宰相と護衛騎士が控えていた。柱と柱の間にも騎士が配置され。警備は厳重だ。

 だけど、いくら警備が厳重でも私には関係ない。もう振り回されるだけの人生は終わりにしたのだ。

「しかしグラントリー殿下、すでにフィルレスとラティシアの婚約は結ばれており、解消するのはいささか……」
「だから、そんなもの王命を下せばなんの問題もないであろう! 今すぐこちらの要求を呑め!」

 国王陛下はなにも言えず青くなっている。まるでなにかに怯えているようで、煮え切らない態度の国王陛下に皇太子殿下も苛立っていた。そういえば、国王陛下は謁見室に入ってきた時から様子がおかしかったと思う。

「もうよい! とにかくこの女は帝国へ連れ帰る! フィルレスとの婚約については、そちらでよく話し合うのだな! 全面戦争を回避したくばオレの提案を呑むしかないぞ!!」

 そう言って、またしてもぐいぐいと手を引かれ、謁見室を出て城の外へと足を進めていく。
 皇太子は戦争を仕掛けると脅して、国王陛下を意のままに動かそうとしたのだ。そんな横暴なやり方にギリッと奥歯を噛みしめる。